「完璧な旅なんか存在しない。カジノにおける完璧な必勝法が存在しないようにね。」
12月。私はマレーシアのペナン行きの飛行機に乗っていた。
あわただしく仕事納めをし、忘年会をし、次の日には成田に向けてもう移動を始めた。朝早くの便だったため前日に一泊し、成田空港に向かい、バタバタと飛行機に乗り込んだ。とりあえず、自分の座席が見つかると、やっと一息つくことができ、この数日のことが思い出された。
仕事のこと、生活のこと、将来のこと…そのようなことが脈絡なく浮かんでは消えていく。本来12月の休みは忙しいものだ。私も今までは、雑事をこなしたり、友人たちと忘年会をしたり、帰省をしたりと過ごしてきた気がする。
しかし、今回は本当に息をつく暇もなく、旅に出てしまった。まるで日本の全て、自分の生活の全てを放擲するかのように。旅に出たい。と同時に、旅に出なければならない。旅に出なければならないし、出たい。そのような横暴な思いがなぜか湧き上がってくるような気もする。
君は旅に出なければならないし、旅に出たいとも思ってるんだ。
いずれにせよ、もう飛行機は離陸している。後戻りはもうできない。旅の中に入っていくしかないのだ。賽は、dieは投げられたのだ。
(サイコロの英語はdie。diceは複数形らしい。まるで、死が投げられたかのように。。。)